ジオンはコロニー落としと、レビル将軍の捕縛という戦果により、壊滅的な打撃を受けていた地球連邦に対し、停戦を持ち掛けた。その内容は事実上の降伏勧告であり、連邦は条約の締結もやむなし。との意見が大勢を占めていた。
そして南極においてジオンと連邦の高官が条約締結のため、会談を行うとの情報がロンドベルへもたらされた。
史実・・・彼らの世界の史実では、ジオンを脱出したレビル将軍の演説により南極条約は核兵器などの使用禁止条約にとどまり、連邦とジオンは泥沼の地上戦へと突入していくことになっていた。
レビル将軍が向かっているはずのルナツーへのルートから、救難信号が発せられた。レビル将軍であれば、放置すれば連邦とジオンの戦争が終わる可能性もある。だが、その場合はザビ家の独裁による地上人類の抹殺という最悪の結末を迎える恐れもあった。
レビルを救出し、連邦とのコネクションを持つ。それがロンドベル指揮官、リカルド・フェリーニ中佐の結論だった。なにより、彼はレビル将軍の大ファンなのだ。
緊急発進が可能なのは、SMSのバルキリー数機と、VF-25、グルンガストのみであった。レビル救出のため急行するロンドベル。そこで見たものは、レビルのシャトルを捕獲しようとするゼントラーディ軍であった。
ゼントラーディ軍を撃退したのも束の間、ジオンのものと思われるモビルスーツ部隊に急襲される。MS-10ヅダと、MS-17Rガルバルディ。それは彼らの知る史実では、存在しえないものであった。
いや、ヅダはまだ可能性はある。少数とは言え生産された機体だ。だがガルバルディは?
その赤い機体はまるで赤い彗星であるかのようにロンドベルを翻弄し、驚異的な性能を見せた。これまでかと思われたそのとき、推進剤切れを憂慮したガルバルディは戦線を離脱していった。
辛くもレビル将軍救出に成功したロンドベルは、無事にルナツーへ送り届け、歴史に名高い「ジオンに兵なし」の演説が行われた。これにより南極条約は戦時条約にとどまり、戦争は継続されることとなる。
レビルは後日の会談を約し、ロンドベルへ謝意を示した。この結果が、この世界の歴史をどう動かしていくのか、まだ誰にも分らない。分からない・・・はずであった。
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